はじめに

2013年1月、私はさしたる期待も不安も持たず武生青年会議所に入会しました。「つまらなかったら辞めよう」程度の気持ちだった青年会議所に対する態度は、そのまま社会人として、人間として、責任感のかけらもない人間性をよく表していたと思います。そんな私の価値観を大きく揺さぶったのが、多くの先輩たちとの出会いでした。自分の得にならないことに興味の持てなかった私にとって、地域のため、未来のためと無償の奉仕を続けるJAYCEEの姿はあまりにも新鮮で眩しく「自分もこのようなリーダーでありたい」と、心に憧憬の火が灯ったことを覚えています。多くの先輩や仲間たちに惜しみない愛を頂きながら前進し、時には後退することもありましたが、多大なる御恩のある武生青年会議所に恩を返し、次代へと想いを繋ぐため、武生青年会議所全会員と共に新たな一歩を踏み出します。

変化の中にある組織として

社会情勢や価値観の変化という時代の大きな流れ、私たちはこれを柔軟に受け止め、運動を展開しつづける必要があります。また受動的に時勢を読むだけでなく、能動的に自らを省みたときに変えるべきものは変革を断行しなければなりません。それと同時に「奉仕・修練・友情」からなるJC三信条や、三信条を実行した結果生まれる会員同士の絆のように、目に見えない武生青年会議所としての堅持すべき価値はしっかりと守り伝えていかなければなりません。そうでなければこの団体は「自己成長と地域の発展を担う青年経済人の団体」ではなく烏合の衆に成り果て、存在価値を失ってしまいます。一般社団法人として再始動する武生青年会議所はどのような組織であるべきなのか。会員一人ひとりが思考し、成長を実現できる組織であり続けることで芯のある組織としてこのまちに存在し続けます。

生死の境にある組織として

近年、全国的に青年会議所の人数は減少傾向にあります。日本全体ではこの10年で40,000人から28,000人にまで数を減らしています。武生青年会議所も例外ではなく、私が入会した2013年には88名のメンバーがいましたが2024年は44名まで半減しており、数年後には僅か10名ほどの組織になります。また人数の減少と並んで問題になるのが在籍年数の短期化です。在籍年数は短くとも既存会員にとっては新しい出会いであり学びのきっかけを頂ける大切な存在ですが、入会した当人にとってはせっかく入会しても経験を積める時間が少なく満足のいく学びを得られない可能性もあり、可能な限り若い時期に入会していただくことが肝要です。このまま問題を放置すれば将来的にはメンバーの育成や、地域課題解決への活動にも支障が出ることが予想できます。この2つの問題を解消できなければ、武生青年会議所が生き残る未来はありません。組織のためだけでなく、新たな出会いによる学びや成長の機会をメンバーに提供し続けるためにも、既存の手法のみに囚われない自由な発想で会員拡大に邁進し、武生青年会議所に新たな生命力を吹き込みます。

シン化するまちの組織として

2024年度にいよいよ北陸新幹線が開業しますが、新幹線もその駅も所詮はただの道具でしかありません。この道具を使う人たちへどのように我がまちの魅力を伝えるのかが大きな課題です。魅力を伝えられなければ、このまちが目的地として、また生活の場として選ばれることはないでしょう。では、他地域で暮らす人々にとってどのようなことが魅力的に映るのでしょうか。近年はウェルビーイングという言葉が注目を集めています。「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」を指す言葉として使われていますが、地域の魅力とは経済発展や地域文化のみならず、こうした因子を取り入れ、個人の幸福を実感できるまちが魅力的に映ると考えます。新幹線開業というせっかくの機会を無にしないためにも、地域資源の発掘にとどまらず、魅力の開発に繋がる一層の進化・深化・新化したまちづくりに邁進します。

理想と現実を生きる青年として

「人が現実に生きているのと、人間がいかに生きるべきかというのは、はなはだかけ離れている。だから、人間いかに生きるべきかを見て、現に人が生きている現実の姿を見逃す人間は、自立するどころか破滅するのが落ちである」(君主論)
理想を描くばかりで地に足のついていない人間は破滅する、とマキャベリの君主論で述べられています。組織に置き換えてもそれは同じことです。青年会議所も当然、現実に即した体制での活動を行わなければ破滅は避けられません。しかし現実を直視したからこそ社会のためにできる理想を追求し、また一人のJAYCEEとして1mmでも自分の理想像に近づくために、困難だと思われることでも挑戦しようという断固たる覚悟を持って生きなければなりません。それは時に苦痛を伴う選択かもしれませんが、挑戦無くして成長も無いのです。JCで唯一約束されている「自己成長」。その機会を逃すまいとする精神を持ち自らを高め続けます。

結びに

「武士道と云ふは 死ぬ事と見付けたり」(葉隠)
「死ぬ」か「生きる」かの選択を迫られた時、迷い無く死を選ぶことが武士道の本懐であり、常日頃から覚悟をしておかねばならない。そうして我が身大事の束縛から解放され、本気で取り組めばそれは自分自身を生かすことに繋がるのです。仕事や青年会議所に置き換えれば「やる」か「やらないか」を迫られた時、迷い無く「やる」を選択するのがリーダーの本懐と言えます。そしてそのような決断に迫られた時には、私が、あなたがやらなければ誰も代わりにはやってくれません。自分がやるしかないのです。その決断を下す叡智、勇気、情熱を持てるように変化できる場所、それが青年会議所だと考えます。
変化する社会、時代をけん引するリーダーを目指し、乾坤一擲、青年会議所という学び舎で共に挑戦し続けよう。武生青年会議所の一員として。